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【実写検証】Mavic 4 Proで“17.7ストップのダイナミックレンジ”は本当か?
前回の記事では、DJI Mavic 4 ProのALL-I形式がDaVinci Resolve Studioで読み込めず、「Media Offline」になる現象について検証しました。
👉 前回の記事:「Mavic 4 ProのALL-IがDaVinciで再生できない」
今回は、そこから一歩進めて、Mavic 4 Proが持つ本質的な映像力──“17.7ストップ”という驚異的なダイナミックレンジについて、実写比較と技術分析をもとに読み解いていきます。
検証のきっかけ:D-Log M + Auto ISOは本当に“D-Log超え”なのか?
この検証を行ったきっかけは、海外のユーザーコミュニティと技術検証記事にあります。
米メディア DroneXL によれば、YouTuberの Make.Art.Now. および Gerald Undone が行った Xyla 21チャートによる測定で、
D‑Log M + Auto ISO + Dual-Gain ISO Fusion の組み合わせが 最大17.7ストップのダイナミックレンジを実現したと報告されています。
一方、通常のD‑Logでは、同様の環境下でも 14.7ストップにとどまるという結果。
出典:
さらに、Mavic Pilotsフォーラムでも以下のような投稿が話題に:
「D‑Log M(Auto ISO)がD‑Logよりも明らかに良い映像になる。色も階調も豊か。」
出典:
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Mavic Pilotsフォーラム投稿
https://mavicpilots.com/threads/d-log-m-with-auto-iso-superior-to-d-log.152559/?utm_source=chatgpt.com
このような情報を受け、
「本当にLogモードの違いがここまでの差を生むのか?」
を、自身の機材と実写で検証してみることにしました。
ダイナミックレンジとは何か?
**ダイナミックレンジ(Dynamic Range)**とは、
最も明るい部分から最も暗い部分までを、破綻せずに記録できる明暗の幅のこと。
これが広ければ、白飛びせず空のハイライトが保持され、黒潰れせず影の中のディテールも残ります。
動画ではLog撮影の性能がダイナミックレンジの鍵を握っています。
D-LogとD-Log Mの違い
特に注目すべきは、Auto ISO × Dual-Gain ISO Fusion。
これは2系統のISO回路を同時駆動し、暗部と明部を個別に最適露出で記録する技術で、ノイズを抑えながら広いダイナミックレンジを得られる革新的手法です。
実写比較:Mavic 3 Cine vs Mavic 4 Pro
検証に使用したのは以下の2機種:
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Mavic 3 Cine:D-Log、D-Log M(H.265/ProRes)
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Mavic 4 Pro:D-Log、D-Log M(H.265/ALL-I)
撮影条件(共通):
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ISO:400
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シャッタースピード:1/60秒
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絞り:F8
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純正のLutでRec.709に変換
📷 比較画像①:H.265収録
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Mavic 3:D-Log、D-Log M
- Mavic 4:D-Log、D-Log M
窓枠の外に広がる青空に注目。Mavic 3のD-Logではハイライトが白飛びしていたが、Mavic 4のD-Log Mでは、空の青がしっかり残り、グラデーションが破綻せず表現されていた。
📷 比較画像②:ProRes / ALL-I収録
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Mavic 3:ProRes 422 HQ / D-Log、D-Log M
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Mavic 4:ALL-I / D-Log、D-Log M
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Mavic 4 D-Log Mの方が圧倒的に滑らかで、カラーグレーディング後の耐性が高いことが確認できた。先のと同じく青空の残り方が違う、またこちらは暗部も少しディティールがあがっている。
実測17.7ストップの裏付け
Make.Art.Now.とGerald UndoneがXyla 21ステップチャートで測定した結果によると:
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D‑Log(従来):約14.7ストップ
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D‑Log M(Auto ISO使用):最大17.7ストップ
この性能は、**RED KomodoやBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K(BMPCC6K)**と肩を並べる水準。
ドローンとしては、まさに別次元の表現力です。
実運用における注意点
✔ Auto ISOは“魔法”だが、制御も必要
急激な露出変化があるシーンでは、Auto ISOが過剰に反応して画が暴れる可能性も。
→ ISO上限設定・露出ロックの併用を推奨。
✔ D-Log Mは編集前提
D-Log Mは編集耐性が高い反面、撮って出しでは眠い画。
→ **DJI公式LUT + カラーグレーディング(DaVinciやPremiere)**が前提。
結論:一点気になること:Mavic 4が「ProRes非対応」であるという現実
雲が流れる空の明暗。森の揺らぎ。都市の輪郭。
そのすべてを、撮影できる可能性があることが確認できました。
ただ、ここで一点、気になる点にも触れておきたい。
Mavic 3 CineはProRes 422 HQでの収録に対応していたが、Mavic 4 ProはProRes非対応で、代わりにAll-Intra(ALL-I)記録に移行している。
もちろん、ALL-Iも編集耐性の高い圧縮方式であり、Long-GOPに比べてフレーム間の情報圧縮がない分、精密なカラーグレーディングに適している。
実際、今回の検証でもALL-I + D-Log Mによる映像は階調の再現性が高く、ノイズの抑制も良好だった。
しかしながら──
「映像業務の最上流に位置する現場」においては、ProResがデファクトである現状は変わっていない。
編集ワークフローや納品規格の観点で、ProRes非対応であることに物足りなさや制限を感じるプロもいるだろう。
Mavic 4 Proはその圧倒的な映像ポテンシャルと引き換えに、ある種の“軽量化された運用志向”を選んだとも言える。